カイロ宣言は捏造、1972年の日中共同声明の再検証を

統一白書 1993 年8月31日一中白書 2000年2月21日中国總理談話 2004年 3月14日 中国北京

(1)中国は、カイロ宣言によって台湾は中国に返還されたと強調しており、1972年に行われた日本、中国の国交回復に伴い発表された日中共同声明でも、日本はこれを承認した。中国の主張は、上記の白書で詳細に述べられている。要点は以下の通り。

        1. 1945年9月2日、日本が署名した降伏文書には、中国、アメリカ、イギリスの三カ国がポツダムで発表した宣言条款を受諾したことが明記されている。これは、一般に「ポツダム宣言」と呼ばれている。英語の原稿での名称は「Potsdam Proclamation」。

        2. ポツダム宣言第8項では、「カイロ宣言の条項は履行され、また、日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国並びにわれらが決定する諸小島に局限される」と規定されている。

        3. カイロ宣言では「満州、台湾、澎湖は中華民国に返還される」ことを承諾しており、日本はこれを黙認した。

(2)世界のどこにもカイロ宣言を見つけ出すことはできない
            世界のどこを探しても「カイロ宣言」と称する文書を見つけ出すことはできない。このためポツダム宣言第8項の「カイロ宣言の条項は履行される」という条文に含まれている意味を確定することはできない。

            かし中国は、1943年12月1日にルーズベルト、チャーチル、蒋介石がカイロで発表したプレスコミュニケがカイロ宣言であり、「満州、台湾、澎湖は中華民国に返還される」ことを承諾していると指摘している付録1を参照)。

            中国がカイロ宣言を示さない以上、ここで、中国が根拠とする偽のカイロ宣言であるプレスコミュニケを検証してみることにする。

(3)偽のカイロ宣言にも、台湾を中国に返すとは述べていない

        1. ミュニケの内容:「満州、台湾、澎湖は中華民国に返還される」という字句はあるが、標題にはカイロ宣言(the Cairo Declaration)とは書かれておらず、新聞公報(Press Communique)とあり、ポツダム宣言で指している「カイロ宣言」とは一致しない。

        2. プレスコミュニケには署名がない:コミュニケの原稿には「満州、台湾、澎湖は中華民国に返還される」という字句はあるものの、ル ーズベルト、チャーチル、蒋介石のうち、一人の署名もない(付録1を参照)。しかしルーズベルト、チャーチル、スターリンはイランで の宣言でいずれも署名している。このことは、二人とも、台湾と澎湖が中華民国に返還されることに同意していいことを証明している。

        3. プレスコミュニケは三人の巨頭が発表したものではない:原稿には、その発表時間、地点が記されていない。しかし中国は、1943 年 12 月1日にカイロで発表されたと指摘している。ところが当日、ルーズベルトとチャーチルはテヘランでスターリンと会議を開いている(付録2を参照)。蒋介石はすでに中国の重慶に戻っていた(付録3を参照)。

        このことは、1943年12月1日に三人の巨頭はいずれもカイロにはいなかったことを証明している。また、カイロで発表されたプレスコミュニケの原稿に署名されていないことから、このコミュニケは彼らが発表したものではないことが証明できる。

         4. チャーチルは、カイロ宣言で台湾、澎湖の中華民国への返還を承諾したことを否定している:1955年2月1日、チャーチルはイギリス国会での代表質問に回答した際、カイロ宣言で台湾、澎湖の中華民国へ の返還を承諾したことを否定した付録4を参照)。

        5. ルーズベルトとチャーチルは、満州(旅順、大連)の中華民国への返還をカイロ宣言で承諾したことを否認している:1945年2月11日にルーズベルトとチャーチルはヤルタで密約に署名し、旅順、大連をソ連に譲渡することを承認しており、「カイロ宣言で満州、台湾、澎湖は中華民国に返還されることを承諾した」という中国の主張を徹底的に否定した(付録5を参照)。

(4)結論
            中国はカイロ宣言を捏造して日本をだました。1972年9月29日に発表された日中共同声明第3項で「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基く立場を堅持する」とある。

            日本の外務省はこれにだまされ、「カイロ宣言で満州、台湾、澎湖は中華民国に返還されたことを声明した。しかし1972年の日中国交回復以降は、上述の中華民国は中国を指す」と宣言し、台湾は中国の一部であることを認定した。

            外務省は直ちにこれを改正し、台湾は中国の内政ではなく、中国にへつらうために台湾の内政に干渉することをやめるべきである。

原作者:沈建徳 2004.3.17